お金がなくて受診できず死亡48例に思うこと

理事長の白倉です。いつもあすなろ薬局をご利用いただきありがとうございます。

先日、全日本民医連が「経済的な理由による受診遅れでの死亡事例」(通称:手遅れ死亡事例)の調査結果を発表しました。
その内容が朝日新聞やしんぶん赤旗、日経メディカルなどで報道され、3月31日付の日刊ゲンダイでも詳しく紹介しています。
全日本民医連は弊社ワイエムピーが加盟している団体です。今日はこの手遅れ死亡事例についてお話しします。

全日本民医連は「経済的な理由による受診遅れでの死亡事例」について全国の700の病院や医療施設で調査を行い、2023年の1年間で48例があったと発表しました。うち3例は山梨県内の事例です。

報告された事例の一部を紹介します。

事例1
保険料が払えず無保険。過去にがんと診断され抗がん剤治療をしたが高額な医療費を払えず中断していた70代男性。自宅で衰弱しているところを訪問した地域の健康推進員が発見し救急搬送された。

事例2
経済的な不安から「体調に関して何か言われるのが怖い」と治療に対して拒否傾向がみられた40代女性。受診時には肝硬変など複数疾患が見つかった。

事例3
すい臓がんと診断され検査や治療をすすめられたが、金銭的な余裕がなく受診を中断していた80代男性。病状が悪化するが医療費が高額になることを心配し入院を拒否。その後、痛みがひどくなり救急搬送された。

事例4
コロナ禍による収入減に加え体調不良によって仕事を退職し経済的に困窮。国民健康保険に加入しなかったため無保険状態となり受診が遅れた糖尿病の患者。

48の事例は全て、もっと早くかかれていれば命が助かったという事例です。
これらは民医連に加盟する施設内での調査に過ぎず氷山の一角と考えられます。
おそらく同様の事例が全国各地の病院等にもおきているのではないでしょうか。

私達医療従事者は目の前の命を救うために日々懸命に働いています。
経済的な理由によって本来助かる命を助けられない事実があることにやるせない気持ちでいっぱいです。
これらの事例は、まさに「医者にかかるのは死亡診断書を書いてもらう時だけ」のようで、民医連が誕生した70年前に戻ってしまっているかのようです。
このような悲劇が繰り返されないことを切に願います。

理事長 白倉洋朗